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花の水揚げ方法まとめ|品目別のお手入れ方法を徹底解説

公開日: 2026-08-26

花を長持ちさせるために大切な水揚げ。花の水揚げには、水切り・湯揚げなどいくつかの方法があり、花材ごとに向き不向きがあります。
ただ、方法名と花材の組み合わせを丸暗記しようとすると、覚えていない品種に対応できません。

そこで本記事では、それぞれの方法が「なぜその花材に合うのか」という理由まで含めて解説します。

 

・基本は「水切り」、元気がないときは「湯揚げ」や「深水」を試す
・木質の枝ものやキク科など、独自の水揚げ方法が必要な花材もある
・方法名だけでなく「なぜその処理が合うのか」も理解する 

 

これらを軸として、品目別のお手入れ方法を徹底解説していきます。理由を押さえておくと、初めて扱う花材でも判断に迷いにくくなります。
花屋の店頭・レッスン・装花、どの現場でも使える考え方として、約90品目を方法別に整理し、最後に早見表もつけました。

 


そもそも「水揚げ」はなぜする必要があるのか

切り花は収穫された時点で根からの水分供給ができなくなり、時間が経つほど切り口が乾き、そこに菌が繁殖することでさらに水を吸収しにくくなっていきます。

この水を吸収しにくい原因になっている部分を切り、水を吸い上げやすくする作業が水揚げです。

 


方法ごとに見る、水揚げの基本

1. 水切り|基本的な方法

バケツなどに張った水の中で茎の先端を切り直す、基本的な方法です。

カット方法の違い

茎の硬さによって、適切なカットの仕方が異なります。

①斜めにカットに向いている花材:硬くしっかりした茎

例)バラ、ユリ、カーネーション、ひまわり、トルコキキョウ

②水平カットに向いている花材:柔らかく傷みやすい茎

例)ガーベラ、カラー、ケイトウ、ジニア、アマランサス

 

水の量の違い

切った後どのくらい水の量で管理するかは、茎の性質によって変わります。

①浅水で管理
茎の内部が空洞、または多肉質で水に浸かった部分から腐りやすいタイプは、2〜3cm程度を水に浸けます。

例)ガーベラ、カラー、ケイトウ、ジニア、アマランサス、レースフラワー

②浅め〜中程度の水量:球根や地下茎に水分を蓄えており、地上の茎はそれほど多くの水を必要としないタイプは多くても1/3程度を水に浸けます。

例)クルクマ、アルストロメリア、グロリオサ、リコリス、サンダーソニア、オーニソガラム、アリウム

③標準的な水位:上記に当てはまらない一般的な草花は、1/3〜半分程度を水に浸けます。

例)バラ、ユリ、カーネーション、ひまわり、トルコキキョウ、ダリア、クレマチス、アンスリウム

浅水のイメージ。2〜3cm程度を水に浸ける

深水のイメージ。花全体の1/3〜半分程度を水に浸ける

 

2. 湯揚げ|元気がないときに最適な方法

茎の先端を熱湯に短時間つける方法です。まず不要な葉を取り除き、花頭が蒸気に当たらないように新聞紙などの紙で包んで保護します。

紙から花が出ないようにしてください。湯につける直前に茎を切り戻し、80℃前後の沸騰したお湯に、1~2cmほどの切り口を浸します。

時間の目安は、茎が細くてやわらかい植物は数秒、その他の花材は30秒程度が目安です。

花瓶やエルフに熱湯を入れても良いですが、IHヒーターなどを使ってお湯を沸かし続けると湯が沸くのを待つ手間が省けるのでおすすめです。

花頭が出ないくらいの高さに新聞紙を巻いてください。

その後、あらかじめ用意しておいたたっぷりの水に入れます。水は水道水で大丈夫です。花材にもよりますが、お水には1-2時間つけて置けると安心です。その際、紙は取らなくて大丈夫です。

湯揚げした茎は、熱湯につけた部分が黒く変色しますが、1-2時間水につけた後にカットしてください。

熱湯につけた部分はカットする必要があるので、花材の長さを保つためにつけすぎないようにしてください。水下がりしやすい花や、元気のない花に最適な方法です。

例)バラ、ヒマワリ、ストック、アジサイ、枝物

一方で、茎が太く柔らかい植物、水分を多く含む植物、球根から育つ花に対しては、組織が熱で傷んで腐る原因になるため避けてください。

例)カラー、ガーベラ、チューリップ、ラナンキュラス、アネモネ

 

3. 深水|たっぷりの水に長時間つける

新聞紙などの紙で花全体を包み、茎の半分から3分の2程度が浸かるくらいの水量に数時間〜半日ほど浸しておきます。水圧によって吸水しやすくなります。

新聞が濡れてくることもありますが、花の部分が濡れなければそのままで大丈夫です。

例)バラ、シャクヤク、枝もの

 

4. 水折り/ 空折り|手で茎を折る

はさみを使わず、手で茎をポキッと折る方法です。金属の刃に触れない分、切り口に雑菌が繁殖するのを抑えることができます。

道具は要りません。作業台の縁に折りたい場所を合わせて、体重を乗せて折ることで一度に複数本を折ることができます。

上下に曲げることで簡単に折ることができます。

折った後はこんな感じになります。切り口の繊維がたっぷりと出ていた方が水をしっかり吸うことができます。

例)菊(マム)、トルコキキョウ、リンドウ

 

5. 叩き|枝の先端を叩いてほぐす

ハンマーやハサミの裏などで枝先を叩いて、繊維をほぐす方法です。割るほど太くない枝ものに向いています。

枝の太さによって「割り」と「叩き」を使い分けます。先端から5cm程度を叩き、繊維をほぐします。

例)菊(マム)、トルコキキョウ、リンドウ

 

6. 割り|枝ものの先端に切り込みを入れる

枝の先端に十字などの切り込みを入れ、吸水面を広げる方法です。太い枝ものに有効です。

例)サクラ、ウメ、リョウブ、ドウダンツツジ、スモークツリー、ライラック、スノーボール、ユーカリ

 

7. 皮を削ぐ|皮を削いて、中の綿を取り除く

枝の皮の表面を削ぎます。皮を削ぐことで枝の内側だけでなく外側からも効率よく水が吸えるようになります。

また皮が水中で腐って水が濁るのを防ぐこともできます。

ナイフを使宇ので上級者向けと言えるかもしれませんが、枝を長持ちさせるなら覚えておきたい方法です。枝とナイフを平行にもち、先端の方向にナイフを滑らせます。これを1周繰り返します。

長さとしてはこのくらい削げていればOKです。

6で紹介した「割り」も同時に行うと良いでしょう。

例)アセビなどの枝もの

 

8. 綿を取る|茎を半分に切り、中の綿を取り除く

茎の表面を半分に切り、中の綿を取り除く方法です。
綿を取り除くことで吸水性が上がり、水上がりが良くなります。

茎を半分にカットすると綿が見えてきます。その綿をハサミやナイフの先端で取り除きます。

このくらい取れていればOK。
最初は時間がかかる地道な作業ですが、慣れれば早くできるようになります。

ナイフの使い方に不安がある場合は、ハサミでも取り除くことができます。

例)アジサイ、ビバーナム、芍薬

 

9. 逆さ水|葉裏からも吸水させる

花や葉を逆さにして水につけ、葉裏からも吸水させる方法です。茎だけではなく葉の裏側からも水分が蒸発することを防ぎます。

木質化した枝ものや紫陽花など、水が上がりにくい花に使うことがあります。霧吹きなどで水をたっぷりかけるのも効果的です。

注意点としては、花には水がかからないように注意するのと、そのままにしておくと蒸れるので、後でしっかりと水分を拭き取ることが必要です。

例)葉もの、枝もの、アジサイ、クルクマ

 


水揚げ後の管理方法を、水揚げの方法別にご紹介

水揚げの方法によって、その後の管理方法で、気をつけるポイントも変わります。

深水や湯揚げで処理した花材

元気を取り戻した後もその水位をある程度保つ方が、水上がりのよい状態を維持しやすくなります。

急に浅い水に切り替えると、せっかく吸わせた水の勢いが落ちてしまうため、浅水での管理が良い花材(ガーベラなど)を除いて、深めの水のまま管理するのが基本です。

水折り・叩き・割りで処理した枝ものや茎の太い花材

切り口の面積が広くなる分、雑菌が繁殖しやすくなります。そのため、水替えの頻度を通常より増やし、その都度切り口を作り直すと長持ちしやすくなります。

皮を削いだ・綿を取った花材

削いだ部分から乾燥や変色が進みやすいため、水位を保ちつつも花瓶の水を毎日交換して清潔に保つのがポイントです。

どの方法で処理した場合も、直射日光や高温多湿を避け、風通しのよい涼しい場所に置くことは共通の基本です。

 


まとめて水揚げする時の効率アップのコツ

花屋やレッスン教室では、一度に何十本、何百本もの花材をまとめて水揚げすることもあるかと思います。そのような時に効率よく進めるコツを紹介します。

方法ごとに花材を仕分けてから作業する

入荷した花材を「水切りで済むもの」「湯揚げが必要なもの」「叩き・割りが必要な枝もの」のようにあらかじめグループ分けしておくと、同じ作業を連続して行えるため、道具の持ち替えや姿勢の切り替えが減り、まとめて処理しやすくなります。

箱から開ける際などまず分ける時に、できる限り花材別に分けて置いておくことがコツです。

また、複数人で水揚げをする場合は、仕分けする担当を決め、役割を分担することで整理がしやすくなります。

水と容器を先に用意しておく

水切り用・湯揚げ用・深水用など、方法ごとにバケツや容器をあらかじめ分けて用意しておくと、作業の途中で水を張り替えたり容器を探したりする手間がなくなります。

特に湯揚げは熱湯からすぐ冷水に移す必要があるため、近くに配置しておくとスムーズです。

下処理後に保管するバケツの位置を調整する

水揚げ後の制作やディスプレイなどの作業へスムーズに進むために、下処理後の花材を水揚げする時に、花材の位置を整理できていると良いです。

例えば色別で制作や店頭にディスプレイをしている場合は、水揚げの時点で色を分けたバケツで保管ができるとその後が動きやすいです。

店頭ディスプレイ・装飾・制作など、複数の用途で花材を仕入れている場合は、水揚げの時点でバケツを用途別に仕分けます。

複数人で水揚げする場合は、それぞれのバケツに用途を記載しておくと、誰が見ても迷わなくなります。

道具の切れ味を整えておく

ハサミの切れ味は下処理のクオリティに直結します。刃こぼれや切れ味の落ちたハサミで切ると切り口がつぶれ、水を吸う管がふさがれて水上がりが悪くなります。

定期的に刃を研いでおくのはもちろんのこと、適切な道具を使えるように、通常の花材用のハサミとは別に枝用のハサミや、棘取り・ハンマーなどを準備しておくことで、本数が多い日でも下処理の仕上がりにばらつきが出にくくなります。

トゲ取り器は力加減に注意する

バラなど本数の多い花材でトゲ取り器を使う場合、力を入れすぎると、導管という茎の表皮のすぐ下にある水の通り道まで傷つけてしまい、かえって水が上がりにくくなることがあります。表面を傷つけない程度の力加減を意識しましょう。

 


水揚げ後の管理方法を、水揚げの方法別にご紹介

Q. 切り花延命剤を使えば、水揚げは省略してもいい?

A. 延命剤は水を清潔に保ち花もちを助けるものであり、水揚げの代わりにはなりません。

切り口が詰まった状態のままでは、延命剤の入った水も吸い上げられないため、水揚げをしたうえで併用するのが基本です。

Q. 一度しおれてしまった花材でも、水揚げでまた元気になる?

A. 水切れによるしおれであれば、茎の先端を切り直し、深水で水揚げすることで復活することがあります。

ただし、花びらまで傷んでしまっている場合は水揚げだけでは戻らないため、水切れなのか、花の痛みなのかを見極め、必要に応じて処理をしましょう。

Q. 夏と冬で水揚げのやり方を変える必要はある?

A. 夏場は気温が高く花が傷みやすいため、なるべく涼しい場所・冷たい水で手早く作業するのがポイントです。暑い日は水道の水がぬるい場合があるので、冷房の効いている部屋で事前に汲んでおいて冷たい水にしておくと良いです。

冬場は暖房の風が直接当たる場所を避けつつ、冬場は暖房の風が直接当たる場所を避けつつ、水温が低すぎると吸水が進みにくくなるため、常温の水を使うか、水道から出したばかりの冷たい水をそのまま使わず、一晩置いて常温にしてから使うと吸水効率が上がります。

Q. 複数の水揚げ方法を組み合わせてもいい?

A. 組み合わせて問題ありません。木質の枝ものでは、割りや叩きで吸水面を広げたうえで深水につけることで、それぞれの水揚げ方法の効果が期待されます。例えば、あせびなどの枝の場合、皮を削ぐ処理と割りを同時に行うと、より水が上がりやすくなります。

 


品目別 早見表

花材

水揚げ方法

ポイント

バラ

湯揚げ・深水

・トゲと葉を取り除く
・水をたっぷり好む性質がある水切れに注意する

ひまわり

湯揚げ

・茎を水平にカットする
・浅水で管理する
・元気がないときは湯揚げ

ユリ

水切り

・早く開花させたいときは深水や暖かい場所で保管する

カーネーション

水切り

・節のすぐ上で切ると、水が上がりやすい

ガーベラ

水切り・浅水

・水平にカットする
・浅水で管理する

菊(マム)

水折り

・手で折る

ダリア

水切り

・花頭が傷つきやすいので、机に置く際や保管時にはものに当たらないように注意する

ユーカリ

叩き・割り

・木質化した枝は先端を軽く叩いて繊維をほぐす
・太いものは十字に割るのも効果的

クルクマ 水切り・逆さ水 ・全体に水をかぶせる逆さ水が効果的
ケイトウ・セロシア 水切り・湯揚げ

・水下がりしやすいため、湯上げがおすすめ
・不要な葉っぱは取り除く

コスモス

湯揚げ

・乾燥に弱いため、湯揚げ後は深水でしっかり吸水させる

リンドウ

水切り

・上から下の方まで花が咲くタイプなので、水に浸かる部分は花と葉を取り除く

カスミソウ

水切り

・水の中で茎を数センチ切り、そのまま数分間水につけておく一般的な方法でOK

クレマチス

水切り

・水下がりしやすいので、元気がない場合は湯揚げがおすすめ
・つる性で活けるのが少し難しいため、花瓶に活けた時に水に浸かっていない茎がないか注意する

トルコキキョウ

水折り

・手で折る

アジサイ

皮を削ぐ・湯揚げ

・茎の中の綿を取り除く
・水をたっぷり好む性質がある水切れに注意する

チューリップ

水切り・浅水

・切ってからも茎が伸び続けるため、浅水で管理して曲がりを防ぐ

ラナンキュラス

水切り・湯揚げ

・茎が細く柔らかいため湯揚げが効果的
・花瓶の水は浅水にする

アネモネ

水切り・浅水

・ラナンキュラスと同様、球根性で茎が柔らかいため浅水で管理する

スイートピー

水切り

・茎が細くつぶれやすいため斜めではなく水平にカットする
・水はやや少なめにする

フリージア

水切り

・切り口を斜めに大きく切って吸水面を広げる
・水替えのたびに茎のぬめりを洗い流す

ミモザ

皮を削ぐ・深水

・水に浸かる部分の樹皮を薄く削いで吸水面を増やす
・深水でしっかり吸わせる

割り

・先端に十字の切り込みを入れて吸水面を広げる

ライラック

割り

・木質でやや水を吸いにくいため、割りが有効

芍薬

皮を削ぐ・深水

・茎の中の綿を取り除く

 

水揚げの方法は多岐にわたりますが、大切なのは方法名を覚えることではなく、その花材がなぜその処理を必要としているのかを理解することです。

理由が分かっていれば、この記事に載っていない花材が入荷したときも、茎の硬さや性質を見て近い方法を選べるようになります。

花屋の店頭・レッスン・装花など、それぞれの現場で、早見表と合わせて日々の下処理に役立ててください。