ユリの水揚げ方法|花粉の扱いに要注意
ユリは大輪の花びらと存在感のある香りが魅力の花材ですが、花粉による汚れや香りの強さへ気を遣う必要のある花材です。仕入れ直後の下処理を丁寧に行うかどうかで、開花のタイミングや花もちの長さが変わってきます。まずは仕入れてすぐの水揚げからおさえておきましょう。
・水に浸かる葉を取り除いてから茎の先を水中で斜めに切り、深水に2〜4時間つける
・花が開き始めたらできるだけ早く花粉を摘み取る
・浅めの水で保管する
・開花させたいタイミングに合わせて保管場所を移動させる
というのがユリを綺麗な状態で長持ちさせる基本です。手順の意味を押さえておくことで、店頭やレッスンでの説明の説得力が増します。
仕入れ直後にまずやること
STEP1:葉の量で開花のペースを合わせる
入荷したユリは茎に葉が多く残っており、そのままでは花まで届くはずの水分が葉にも取られてしまいます。水に浸かる位置の葉と、つぼみのすぐ下についた葉を中心に取り除きましょう。
また、葉を多めに落とすほど花に水分が回りやすくなって開花が早まり、逆に残す量を増やすとゆっくり開く傾向があります。いつ咲かせたいかによって落とす葉の量を変えて調整すると良いです。咲かせるタイミングは、置き場所の温度でも調整できます。早く咲かせたいときは暖かい場所で保管し、ゆっくり咲かせたいときは涼しい場所に置くと、開花のペースをコントロールしやすくなります。
STEP2:水の中で茎を斜めに切る
茎の先端は、水に浸けたままの状態で2〜3cmほど切り戻します。空気に触れさせずに切ることで、茎の中の管に気泡が入り込むのを防ぎ、水を吸い上げる働きを止めずに済みます。切ったらすぐに、茎の7〜8割ほどが浸かる深さの水に入れ、2〜4時間ほど水に浸けます。
STEP3:花粉は開く前に取り除く
おしべの先端にある「やく」が破れると花粉が飛び散り、花びらや服などを汚してしまいます。花粉は一度付くと中々取れないので、要注意です。
やくがまだ固く花粉が出ていない段階であれば、指先で軽くつまみ取るだけでも簡単に処理できます。すでに花粉がたっぷり出ている場合は、指で触れると余計に飛び散りやすいため、ティッシュでつまみ取るか、やくの下側の切りやすい部分をハサミで切り落とすとよいでしょう。
花がやや開きかけた段階で、できるだけ早いタイミングで処理しておくのがポイントです。受粉が進むと花の寿命も縮むため、この作業は花もちを保つうえでも欠かせません。写真は、綺麗に花粉をとったユリです。
花びらが花粉で汚れてしまったユリです。手で取ろうとしても中々取れません。
日々のお手入れ
水揚げが済んだら、ユリの高さの1/4〜1/5ほどの水で保管をします。もともと吸水力の強い花材で、少ない水でも茎から効率よく水を吸い上げられるため、深水にしなくても十分に花まで水分が行き渡ります。逆に水位を上げてしまうと、茎が水に浸かる部分が増えて雑菌が繁殖しやすくなり、水が汚れて吸水経路がふさがれる原因になります。ユリは茎がやや太く肉厚なので、長時間水に浸かった部分から傷み・腐敗も進みやすい花材です。
咲き終わった花は早めに摘み取ると、残ったつぼみに栄養が回りやすくなります。水替えの頻度は夏場は毎日、それ以外の季節は2日に1回を基準にし、その都度花瓶も洗って清潔さを保ちます。
花粉が服や什器についてしまったときは
花粉が乾いた状態であれば、粘着テープをそっと押し当てて叩くようにすると、繊維をこすらずに花粉だけを取り除きやすくなります。テープで取りきれない分は、ティッシュや乾いた布で軽くはたき、最後にもう一度テープで仕上げると細かい粉を落としやすくなります。
水で濡らして拭き取るのは絶対に避けてください。花粉が繊維の奥に擦り込まれてシミが広がり、かえって落ちにくくなります。もし水や汗でにじんでシミになってしまった場合は、家庭での対処が難しいことも多いので、早めにクリーニング店へ相談するのが安心です。
什器やテーブルなど水拭きできる場所についた場合も、まずは乾いた状態で粘着テープや掃除機で粉を取り除いてから水拭きすると、跡が残りにくくなります。
シーンごとの注意点

花屋(店頭)
陳列中は花粉が制服や他の商品に付着しやすいため、できるだけ早いタイミングで花粉を摘み取ることが基本です。やくが破れて花粉が飛び散ってからでは花びらや周囲の商品にまでシミが広がってしまうため、開花に気づいたらその日のうちに処理するようにしましょう。閉め切った店内では香りがこもりやすいので、換気も意識しましょう。猫を飼っているお客様への販売時には、花粉に強い毒性があることを一言添えておくと親切です。
レッスン
花粉の除去は生徒さんに練習してもらいたい工程です。
また、ユリを使った作品は咲くか咲いていないかでデザインが大きく変わるので、咲いた後にどのような形になるのかを想像しながら制作することが大切です。その点を生徒さんをサポートしながら制作を進めましょう。
装花(ブライダル/イベント)
香りの強さが気になる場合があるため、香りの控えめなアジアティック系を選ぶ、あるいは開花直前まで蕾の状態で管理するなどの調整を検討します。本番当日に見頃を迎えるよう、開花日数を踏まえた仕入れと、当日までの管理を行いましょう。
仏花
仏花として良く使われる白い百合は、白い花びらに花粉のシミが目立ちやすいため、花粉の除去は開花の初期に、特に丁寧に行います。限られた空間に供えることが多く香りがこもりやすいので、こまめな換気や水替えで清潔を保つことも長持ちにつながります。下から順に咲く性質を踏まえ、咲き終わった花はこまめに摘み取ると見た目も保てます。
豆知識

ユリは猫にとって強い毒性を持つことで知られています。花粉だけでなく葉・茎・花びら・球根まで植物全体が猫にとっては毒です。花粉を少し舐めた、花瓶の水を口にしただけでも急性腎不全を起こす危険があるため、猫を飼っているお客様や生徒さんに扱ってもらう際は、ユリを猫の届く場所に残さないことを必ず伝えましょう。
ユリを食べてしまったかもしれないと気づいたら、症状が出ていなくても、自己解決せずに動物病院へ連絡をしてください。
よくある質問と答え方
Q. つぼみが開かないまま止まってしまったときは?
A. 気温が低い、あるいは水が十分に吸えていないことが主な原因です。ぬるま湯(40〜50℃程度)に茎の先だけをしばらく浸けてから冷水に移すと、水の通りが回復して開花が進むことがあります。また、不要な葉を取り除くことで栄養を行き渡らせることができます。暖かく直接日光の当たらない暖かい場所に置くのも有効です。
Q. 香りが強すぎて置き場所に困る場合は?
A. 開花が進むほど香りも強くなるため、つぼみの状態で管理する時間を長めにとる、換気を工夫するといった対応で調整できます。また、アジアティック系などもともと香りが控えめな品種を選ぶという手段もあります。
Q. 装花など本番に開花のタイミングを合わせるには?
A. 目安として夏場で2〜3日、冬場で4〜5日ほどかけて開花します。本番の日程から逆算して仕入れ日を決め、早く咲かせたい場合は暖かい場所での保管と葉を多めに落とす管理、ゆっくり咲かせたい場合は涼しい場所での保管と葉を残し気味で管理という風に使い分けます。
Q. レッスンで生徒に教える際、特に気をつけたいことは?
A. 生徒さんの服に花粉がつかないよう注意することが一番のポイントです。花粉の除去はできるだけ早めに済ませ、花粉が出てしまった茎には不用意に触れないよう声をかけておくと安心です。
Q. 店頭に並べる際、特に気をつけたいことは?
A. ドア付近など外気や直射日光にさらされやすい場所は避け、水位もこまめに確認することで長持ちをさせましょう。購入したお客様が長く楽しめるように、満開のものではなくふっくらとしたつぼみが残っているものを販売するようにしましょう。また、お客様に花粉がつかないよう、陳列しているユリが開花したらすぐに花粉を除去しましょう。
Q. 良い状態のユリを見分けるポイントは?
A. つぼみがふっくらとして色づき始めているもの、葉の色が濃く変色していないもの、茎がしっかりして曲がっていないものを選びます。極端に固いつぼみは開花までに時間がかかる点も踏まえて選びましょう。
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