「自分が手がけたバラが、未来の定番になれば」1万品種の候補から生まれる美しいバラ やぎバラ育種農園 / 静岡県菊川市|花の仕入れを簡単に。花材の卸通販|ハナイチ

「自分が手がけたバラが、未来の定番になれば」1万品種の候補から生まれる美しいバラ やぎバラ育種農園 / 静岡県菊川市

公開日: 2026-07-17

静岡県でバラの切り花を手がけるやぎバラ育種農園は、出荷するバラのほとんどが自社で開発したオリジナル品種です。1万品種もの候補を、5年かけて4〜5品種まで絞り込み、世に送り出す育種を20年以上続けてきました。品種の使用を許諾する形で海外に提供しており、今後は育種した品種を流通させる仕組みを日本全体に広げることへ取り組もうと考えています。

▶︎ マゼンダピンクの花びらと花の中心部のグリーンのコントラストが美しすぎるバラ、ユニベール

 


「一輪で絵になるバラ」ほとんどがオリジナル品種

やぎバラ育種農園で出荷されるバラは、そのほとんどが自社で育種したオリジナル品種です。

代表的なのがヤギパープル。深みのある紫系の品種で、国内の出荷にとどまらず、海外の生産者にロイヤリティで品種を提供しています。

ラロックもやぎバラ育種農園オリジナルの品種です。やわらかなピンク系で、かための花びらが幾重にも重なる特徴的な咲き方をします。白系のラロックであるホワイトラロックも数年前から本格的に増やし始めたとのことです。

▶︎ 上からヤギパープル、ラロック。いずれもやぎバラ育種農園のオリジナル品種

 


育種の舞台裏:1万種類から4〜5品種が生まれるまで

オリジナル品種の開発は、膨大な数の候補から始まります。1年目に約1万品種の候補から100品種に絞り込み、2年目に20〜30品種、3年目に4〜5品種まで絞ります。そこからさらにテスト栽培を経て、ようやく、たった2〜3品種が出荷できる品種として世に出る。この工程に5年かかります。1万種類のうち8〜9割の候補は途中で消えていきます。

品種を選ぶ基準は、色と香り、花の形の美しさ、そして病気への強さや生産性です。「きれいなだけではダメで、茎が長く伸びることや、栽培できる花の数が多く回転が良いことも大事」と話します。コスト上昇が続く今は、特に生産性の比重が上がっています。

▶︎ 候補となる品種が並ぶハウス。5年かけて出荷できる品種に育てていく

 


夏でも比較的崩れにくい品種、ラロック

夏は、バラを育てるのが難しい季節です。高温によって農場では花が小さくなりやすく、7月以降は多くの品種で花の輪が小さくなります。さらに配送中や保管中の熱でも品質が落ちるため、夏のバラは農場の出来だけでなく流通の段階でもリスクがあります。

ラロックは他の品種と比べて夏に品質が落ちにくい品種です。そのため、他のバラと比べると、むしろ夏のほうが魅力を発揮しやすいと言えるかもしれません。ただし、これはあくまで他品種との相対的な比較をした場合の話です。夏のバラの管理が全般的に難しいことに変わりはないため、取り扱いの際は温度管理に十分に注意が必要です。

 


「新品種を作って定番にしていく」育種で日本のバラ産業を変えたい

やぎバラ育種農園が目指す次のステップは、育種した品種を流通させる仕組みを日本全体に広げることです。

現在はヤギパープルを品種の使用を許諾する形で海外に提供しており、国内でも同様のモデルを作りたいと考えています。品種が定番として認知されれば、やぎバラ育種農園が作らなくても、他の産地の生産者が同じ品種を作って安定供給できるようになります。

新しい品種の開発に力を入れ、できた新品種を定番化する。生産者はもちろん、花屋と一緒にこの流れを作っていきたい、と語ります。

バラ農家は年々減少が続いていて、初期投資が1億円規模になること、冬場の暖房コストが高いことなどが参入障壁になっています。そのなかで「定番の新品種を作る」という方向性は、やぎバラ育種農園が育種に力を入れてきたからこそ描ける展望です。

▶︎ 「定番の新品種を作る」ことを長期目標に育種を続けてきた

 


フローリストへ:バラを長持ちさせるために

バラのケアについてポイントを教えてもらいました。

まず水を清潔に保つことが基本です。水が汚れるとバクテリアにより茎の維管束を詰まらせて吸い上げが落ちるため、こまめな水替えと切り戻しが有効です。

茎の部分だけでなく、棘の表面や傷口はバクテリアが繁殖しやすいため、可能であれば丁寧に取り除くことで水を清潔に保ちやすくなります。

また、葉をつけ過ぎることで、葉からの蒸散が増えるため、バランスよく残すことが大切です。

▶︎ 棘の有無も開き方も品種それぞれ。品種ごとの特徴を考慮することも大切とのこと

 


最後に

私も個人的に大好きなラロックをはじめとした、唯一無二のバラを作り続けているやぎバラ育種農園さんが目指す、新しい品種を生み出し、日本のバラの定番として育てていくことで、日本のバラ産業を盛り上げていきたい、そんな展望を伺うことができました。

裏側では世に出ることなく消えていった8〜9割の候補品種があることを、淡々と話されていた八木さんですが、やはり長い間育てていたバラがなくなるのは寂しいとおっしゃっていました。

そんな膨大な試みの積み重ねの先に、日本のバラの新しい定番が生まれていく。その未来が、楽しみでなりません。

 

▶︎ 両手が一杯になるくらい沢山のバラを摘んでプレゼントしてくださいました

 


ハナイチでもやぎバラ育種農園のバラが購入できます 🌼

そして、この産地訪問をきっかけに編集部一同すっかり惚れ込んでしまったヤギパープルとラロックをハナイチで販売開始しました!ぜひお手に取ってみてください!!!

 


FARMER'S PROFILE

やぎバラ育種農園(やぎばらいくしゅのうえん)

所在地:静岡県 

主な栽培品目:バラ

🔗公式サイト
https://yagirosebreedingfarm.com

🔗インスタグラム
Instagram @yagirosebreedingfarm 

 


WRITER'S PROFILE

フローリスト:MIU

新卒で入社した大手IT企業から花屋へ転身。フローリストとして修行を経て、現在は株式会社Domuzにて花の卸サイト「ハナイチ」の商品企画や仕入れに携わる。好きな花はクレマチス『水面の妖精』。