焦らず、均一化しない。国産アンスリウム一筋27年 大佐和花卉園 / 千葉県富津市
千葉県富津市にある大佐和花卉園。代表の平野圭祐さんは、2,000坪のハウスでアンスリウムの切り花を育て続けて約27年になります。
国産アンスリウムは市場流通量が少なく、大佐和花卉園はその中でも長年にわたって市場と花屋に出荷してきた農園です。

▶︎ 千葉県富津市にある大佐和花卉園の2,000坪のハウス。アンスリウムの花びらに見える部分は「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる葉が変化した器官。
「植物本来のポテンシャルが出る形で届けたい」
平野さんは「花が咲いた状態・元の形をそのまま届けること」を出荷の基本にしています。
アンスリウムの出荷方法は産地によって異なります。台湾式では梱包コスト削減のために、苞をぺたんこに矯正してから出荷するのが一般的。
一方で、平野さんは花が本来持っている立体感や方向性をそのままの形で出荷しています。「植物本来のポテンシャルが出る形をそのまま出したい」というのが、その理由です。

▶︎ アンスリウムが思い思いの方向に伸びる自然な姿。均一化せずそのまま出荷する。
「お化け咲き」も個性のひとつ
アンスリウムは温度変化に敏感で、暖房の入れ方のタイミングによって、その形に影響が出ます。額が伸びたような形で開花する「お化け咲き」と呼ばれる花形も、そうして起きることがあります。
平野さんはお化け咲きになった花もそのまま出荷することがあります。台湾式のように形を矯正して揃えないのと同じ考え方で、それも含めて植物のありのままの姿だからです。どの花も同じ形に整えることをしない平野さんのスタンスは、イレギュラーな花形に対しても変わりません。

▶︎ 「お化け咲き」は通常より縦長。「お化けが出たぞ〜!」と言うらしい。
実は繊細な花、アンスリウムの梱包は難しい!
アンスリウムを仕入れた方なら誰しも、その梱包の丁寧さに驚いたことがあると思います。「ガラスのように扱って欲しい」と平野さんが言うほど、アンスリウムは見た目に反して繊細な花です。花同士がわずかに接触するだけで傷になるため、箱詰めは1本1本の間にクッション材(パッド)を挟みながら固定していく作業になります。
この丁寧な梱包作業が、長持ちする花を届けることにつながっています。梱包の体験をしましたが、慣れない私は1箱30分もかかってしまいました。慣れた人だと1箱5分程度で梱包できるとのことですが、それでもかなり繊細な作業です。「箱詰めするのも人を選ぶ」と平野さんは言います。


▶︎ 1本1本パッドを挟んで固定していく箱詰め作業。アンスリウムの一つひとつの形に合わせて梱包していくのがすごく難しかった...
フローリストへ:アンスリウムをより長く楽しむために
平野さんから教えてもらったケアのポイントです①頭から水に浸ける ②茎の切り口が茶色く変色してきたら、白い断面が見えるところまで深く切り戻す。その時に維管束(いかんそく) が白くなるところまで切り戻す。
それをやった上でいつも通り水につける。これだけで水の吸い上げが回復し、花持ちが変わります。


▶︎ 思い切って水にドボンと浸けてみると良いということにびっくり。適切なケアで長く楽しめる。
最後に:丁寧な梱包が守るアンスリウム本来の美しさ
平野さんが花づくりで大切にされている「花本来の美しさ」。そして、その美しさを損なうことなくお客様のもとへ届けるために欠かせないのが、丁寧な梱包です。
正直に言うと、これまでアンスリウムを仕入れるたびに「ここまで梱包に手間をかけなくても…」と感じることがありました。けれど実際に梱包を体験して、花同士がほんの少しぶつかるだけで傷になってしまうこと、そして一本一本の花の形や個性を見極めながら、まるでパズルを組み立てるように配置していくことの難しさを、身をもって知りました。
丁寧すぎるとさえ思っていた梱包こそが、個性豊かで可愛らしいアンスリウムを、傷ひとつない状態で私たちの手元まで届けてくれていたのだと、今なら、心からそう思います。

▶︎ 梱包の仕方を1から教えてくださった、平野さんはもはや私の師匠です!!
最後に:アンスリウムの流通事情、国産と輸入の関係性が興味深い!
平野さんから伺ったお話の中で、アンスリウムの国産と輸入の関係性が大変興味深かったです。
通常、開花に合わせて出荷するものですが、アンスリウムは出荷を1ヶ月程度遅らせて在庫として持たせることができるのは他の花にはない強みです。この柔軟性は仲卸や市場にとっても使いやすく、輸入品が入荷できないときに国産でカバーできる産地として重宝されています。
また新品種の導入には独自の進め方があります。新しい種苗が入ってきたとき、別の生産者に先に試験栽培してもらい、育てやすさや株の性格を確認したうえで自分が導入するかを判断するという流れです。産地間での情報共有がリスク管理にもなっています。
連携は国内だけではありません。近年は台湾がアンティーク系などの新しい品種の開発・輸出を進めており、国内で求められる色や質感の需要を台湾産が補うケースも増えています。
輸入と国産が競合するのではなく、互いの得意なところで補い合う関係になっているのが、今のアンスリウム市場の実情です。

▶︎ ノーズの形が個性的な変わり種品種、アンスリウム・セリゼリアナムなど珍しい品種にもトライされている!
ハナイチでも大佐和花卉園のアンスリウムが購入できます 🌼





FARMER'S PROFILE

大佐和花卉園(おおさわかきえん)
所在地:千葉県富津市
主な栽培品目:アンスリウム(切り花、葉)
WRITER'S PROFILE

フローリスト:MIU
新卒入社した大手IT企業から花屋へ転身。フローリストとして修行を経て、現在は株式会社Domuzにて花の卸サイト「ハナイチ」の商品企画や仕入れに携わる。好きな花はクレマチス『水面の妖精』。
