「外から来たからこそ、外に届けたい」デザイナー出身の目線でガーベラの可能性を広げる 松下園芸 / 静岡県浜松市|花の仕入れを簡単に。花材の卸通販|ハナイチ

「外から来たからこそ、外に届けたい」デザイナー出身の目線でガーベラの可能性を広げる 松下園芸 / 静岡県浜松市

公開日: 2026-07-23

静岡県浜松市でガーベラの栽培を行う松下園芸の松下祐実さん。結婚をきっかけに花の世界に入った祐実さんは、元々はデザインの仕事をしていました。

花業界の外から飛び込んだからこそ、業界の外にいる人へ届けることにも自然と意識が向くと言います。Instagramでの発信、染めガーベラへの実験など、取り組みの根っこにあるのは一貫して「花を知らない人への入り口を作りたい」という想いです。

▶︎ 80種類のガーベラが並ぶ松下園芸のハウス。スパイダー・大輪・染めと幅広い品種を揃えている

 


品種選びは「可愛いかどうか」を大切に

松下園芸が手がけるガーベラは80種類に及びます。大輪・ミニ・スパイダー・パスタ系と形もさまざまで「比較的多い方だと思う」と話します。品種を選ぶのは松下夫婦のお二人で、生産性はもちろん、市場の反応も考慮しながら一緒に決めていきます。

その中で祐実さんが特に大切にしているのが「可愛いかどうか」という感覚です。お花屋さんから「こういうの可愛かったけど、ありませんか」と声が上がれば取り入れることもあり、フローリストの声も品種選びに反映させています。

そんな松下園芸で今特に人気が高いのが「クリームスプリングス」。絶妙な淡いピンクが美しい、唯一無二の大輪スパイダーで、注文が殺到しているほどの人気ぶりです。生産者の間では作りにくいことでも知られており、それだけ求められている花でもあります。

▶︎ 松下園芸で人気が高い「クリームスプリングス」。まだ全開じゃないモサモサ状態も可愛らしい

 


染めにトライし続ける、色の実験室

染めも同じ「可愛いかどうか」という感覚で手がけています。新しい色の組み合わせを日々試しながら少しずつラインナップを広げていて「染め方一つで全然違ったりする。品種は80でも、染めやつぼみの状態も入れたら無限大」とのことです。

色の仕上がりを繰り返し確認しながら試行錯誤を重ねています。自分たちで色と名前を決めたガーベラも生まれています。こうした実験的な姿勢が、他産地との差別化にもなっています。

▶︎ 松下園芸が初めて染めガーベラに名前をつけた「ピーコックミント」

 


異業界の柔軟な発想が、花産業に新しい風を吹き込む

結婚をきっかけに花の世界に入った祐実さん。「花屋出身じゃないからこその色使いがあるかもしれない」と自身を振り返るように、業界の外から持ち込んだ目線が、松下園芸の発信のあり方を形づくっています。

Instagramへの力の入れ方は産地の発信として際立っています。品種ごとの表情の違いや、染め、季節ごとの色の変化を丁寧に撮り続けており、@matsushita_engei_ のフォロワーは2026年7月現在、7,000人にも上ります。「写真でほとんど決まると言っても過言ではない」という言葉には、デザインの仕事をされていた方ならではの視点があります。

松下園芸の公式サイトをデザインしたのも祐実さんとのことで、訪れるだけで松下園芸の世界観に引き込まれます(ので、皆さんぜひ訪れてみてください!)また、品種カタログや農場案内も大変丁寧に整えられています。

それぞれでの発信が、松下園芸の産地としての個性を際立たせています。

ハナイチのフローリストの中でも、特に若い世代を中心に松下園芸の話が挙がることが度々あり、その発信力で、フローリストにしっかりと届いていることを感じます。

▶︎ 色彩豊かなガーベラの魅力が存分に伝わるInstagram @matsushita_engei_

 


外から来たからこそ、外に向けて扉を開く

花の業界に外から入ったからこそ、業界の外にいる人の感覚がわかります。「需要がイベントや贈り物に集中しすぎていて、花に興味のない方には入り口がない。知るきっかけも、語るきっかけも少ないのが花産業の課題」と祐実さんは話します。

祐実さんご自身が、ガーベラをほとんど知らない状態でこの世界に入って、知れば知るほど好きになった経験があったとのことで、きっかけさえあれば同じように好きになる人がいるという確信につながっているとのことです。

「どこから繋がるかわからないから、シャットアウトしたくない。」Instagram等を見て連絡してきた人が、花屋さんではなく一般の方だったという経験が何度かあるとのことです。

「シャットアウトしちゃうともう新しいことができなくなる。」可能性を自分で狭めないというスタンスが、松下園芸という産地の動き方に凝縮されているように思います。 

▶︎ 外から来たからこそ、外に向けて扉を開き続ける姿勢を持ち続けられている

 


フローリストへ:ガーベラを長持ちさせるために

水の量について、一般的には「少なめに」と言われることの多いガーベラですが、松下園芸の花に関して言えば、実験の結果「環境や品種によるけれど、10センチくらい入れるのが一番長持ちする」とのこと。

また、首の向きはアレンジのしやすさに大きく影響します。できるだけ真っすぐ、正面を向いた状態で水揚げできると、その後の扱いがぐっと楽になります。そのために、水揚げのタイミングでスリーブや新聞紙などで首を固定してあげることで、変な方向に向いてしまうのを防ぐことができます。一度曲がったものを戻すのは難しいため、最初の水揚げの段階で茎をしっかり支えておくことがポイントになります。

▶︎ ガーベラの茎が曲がってしまう問題は、フローリストからよく聞く声。水揚げでしっかりと首を支えておくのがポイント

 


最後に

私が初めて祐実さんとお話させていただいたのは、産地訪問を依頼する電話でした。突然のお願いにも関わらず、祐実さんは「産地のことを知ってもらえることは嬉しいから」と快諾してくださったことが強く印象に残っています。

訪問を終えて改めて感じるのは、祐実さんのオープンな姿勢こそが、松下園芸の可能性を次々と広げているのということです。

「どこから繋がるかわからないから、シャットアウトしたくない。」祐実さんが持たれているこの姿勢は、生産者の方に限らず、花に関わるすべての人に通じる話のように思えました。

外から来た視点がこれほど新鮮に刺さるということは、花業界にはまだ開かれていない可能性がたくさんあるのだと思います。

▶︎ 業界の外から来たからこそ持てる目線で、産地と花の可能性を広げ続けている

 


 

松下園芸さんのガーベラ、ハナイチでも購入できます 🌼

 


FARMER'S PROFILE

松下園芸(まつしたえんげい)

所在地:静岡県浜松市 

主な栽培品目:ガーベラ

🔗公式サイト
https://www.matsushitaengei.com/

🔗公式Instagram
Instagram @matsushita_engei_ 

 


WRITER'S PROFILE

フローリスト:MIU

新卒で入社した大手IT企業から花屋へ転身。フローリストとして修行を経て、現在は株式会社Domuzにて花の卸サイト「ハナイチ」の商品企画や仕入れに携わる。好きな花はクレマチス『水面の妖精』。