「生産者がいる限り、死に物狂いで花を守る」花の産地を支える、農協の役割 JA丸朝 / 千葉県山武郡芝山町
千葉県芝山町の花の産地を支えるJA丸朝。成田空港からの空路を活用して、北海道から九州まで全国に花を出荷しています。その強みは長年の花担当者による「生産者への向き合い方」にありました。19年間花の現場を見続けた担当者・干野さんの想いと、彼が支える多くの生産者たちの声を聞いてきました。
▶︎ 多くの農家さんの花が集められるJA丸朝の出荷拠点
サンダーソニア:3年かけて育てる、産地の看板商品
JA丸朝を代表する花が、サンダーソニアです。自家採種と球根育成をし、3年かけて育成しています。
かつて、この花は日本ではあまり生産されていませんでした。JA丸朝の職員の目に留まり「これなら作れるんじゃないか」と考えたことがきっかけだったそうです。その判断が功を奏し、今ではサンダーソニアを栽培する農家は11名。JA丸朝の看板商品となりました。
種を植えてから出荷まではなんと約3年。決して短くない、長期的な投資です。自家採種と球根育成をし、消毒・休眠管理・掘り上げ・再植付けを繰り返します。その間、生産者たちはただ待つのではなく、丁寧な管理を重ねていきます。
出荷面についても、JA丸朝は成田空港が近いという立地を活かして、北海道から九州まで約30ヶ所へこれらの花を出荷しています。

専門農協だから、フットワークが軽い
JA丸朝の強みの一つが「専門農協」であるということです。金融や共済などの信用事業は行わず、花や野菜など特定の生産物に特化している農協のことを言います。特化した部門を持つことで、他では難しい柔軟な対応が可能になります。
例えば、「新しい品目を作ってみたい」という生産者の声に対して、干野さんたちは迅速に応え、その気持ちに寄り添うことができます。花という一つの産業に特化した専門農協であるからこそ、判断が早くできるとのことです。
「生産者さんはいつまでも好奇心が旺盛」と干野さんは言います。ご年配の生産者であっても、新しい栽培方法の提案を受けたら、すぐに取り入れる方が多いそうです。
そしてその好奇心の種を無駄にしないように、干野さんら担当者はきちんと応えていきます。その繰り返しからか、実際に訪問時に出会った生産者の皆さんからは、干野さんをはじめとするJA丸朝への信頼が感じられました。
▶︎ 花やその生産者の声を聞き、誠実に向き合っていくJA丸朝の干野さん
農協を通して生まれる、生産者同士の支え合い
印象的だったのは「生産者が丸朝園芸農協に入っているからこそできること」の多さです。
JA丸朝花き部には約30の生産者が所属しています。花作りについてお互いに教え合ったり、出荷場では皆の前で箱を開けて品質を確認し合ったり、月に1回は顔を合わせて生産状況や情報を共有したり。さらに、球根を保管するための冷蔵設備も備えられていたりと、個人では持てない設備の恩恵を受けられます。
▶︎ 夏の間栽培しないカラーの球根をJA丸朝にて他の生産者と保管。冷蔵庫は個人で持つと設営コストも維持コストもかかる
▶︎ 生産者・市場のメンバーとのコミュニケーションの機会が多いのは、農協に所属しているからこそのネットワーク
ネットワークが強いからこそ、未経験者も成長できる:鈴木さんのSPマム
訪問時に出会った生産者の鈴木さんは、成田空港での機内食運搬の仕事から家業の花農業へと転身しました。花づくりの経験は全くなかったそうです。それでもなお、5年の間に驚くほどの成長を遂げたといいます。
「周りの先輩農家さんに聞いたり、相談したりしながら、少しずつ吸収していった」と本人も話します。今年、彼が育てたSPマムは過去イチの出来栄えになったそうです。
これが可能なのは、JA丸朝という組織の力があるからこそ。個人で農業を始めていたら、困った時に相談できる相手がいません。失敗と試行錯誤だけで終わってしまうかもしれません。でも、JA丸朝に加盟していれば、先輩農家たちに教わることができます。同じ産地で、同じ花を育てている農家さんたちの知見や経験が、成長の糧になるのです。
未経験からスタートし、5年で大きな成長を遂げた生産者の鈴木さんから、「ネットワークがあれば、新しいキャリアからでも農業は続けられる」ということを学びました。
▶︎ 5年前に未経験からスタートし、大きな成長を遂げている生産者の鈴木さん
▶︎ 鈴木さんの育てるSPマムは5年で過去最高の出来栄えに。ネットワークが支える成長の軌跡
トルコ栽培の先駆者たち:新しい仕立て方で、労働環境を改善する
JA丸朝に所属する生産者は、ピンチ栽培(一度先端の芽を摘んで、脇から複数の芽を出させる仕立て方)という新しい手法でのトルコキキョウ栽培を導入し、従来の手間を大幅に減らしながらも、質の良い花を育てています。
この栽培方法の背景にあるのは、夏の過酷な作業環境の改善です。つぼみ取りという細かい作業は、40度を超えるハウス内で行われてきました。
農協とメーカーの連携があったからこそ、新しい仕立て方を生産者に提案できました。結果、労働環境が改善されるだけでなく、手間が減った分を価格に反映させることで、消費者も農家も納得できる商品が生まれたのです。
トルコキキョウを育てる鈴木さんは、実はJA丸朝の干野さんの専門学校時代の後輩にあたります。訪問時も、先輩後輩の間柄だからこそのカジュアルなやり取りが交わされていて、生産者と農協の担当者の距離の近さが印象的でした。それもまた、JA丸朝の特徴なのだと感じました。
▶︎ トルコキキョウを育てる鈴木さん(マムを生産されている鈴木さんとは別の方です!)
▶︎ ピンチ栽培という新しい手法に挑戦。手間を削減した分をコストに反映させた
▶︎ 実は干野さんの専門学校時代の後輩の鈴木さん。花について熱く語り合う姿に、お二人の信頼の深さを感じる
最後に:19年花の現場を見続けた、干野さんの現場目線
正直に言うと、私は農協というものへの理解がまだ浅く、生産者にとってどのような役割を担う存在なのか、よく分かっていない部分がありました。
けれど今回、花担当として19年間現場に向き合い続けてきた干野さんと一緒に生産者たちを回り、話を聞く中で、農協が現場でどんな存在なのかが少しずつ見えてきました。
特に心に残ったのは、JA丸朝と生産者の関係性を聞いた時に聞いた、干野さんの熱いお言葉です。
「生産者さんの高齢化はどこの地域でも進んでいる。ただ“生産者さんあってのJA丸朝”なので、自分は生産者さんが花を作り続けるうちは、死に物狂いで花を売り続けます」
干野さんにとって、JA丸朝での仕事は「天職」なのだそうです。干野さんの、花や生産者への向き合い方からは、職務を超えた、深い愛情を感じました。
今回の訪問で、農協とは、生産者と共に、より良い花を作り続けることに伴走する存在なのだと分かりました。生産物に特化した専門農協だからこその柔軟性。加盟する農家さん同士で教え合い、支え合うネットワーク。そして、干野さんのような人材の存在。
JA丸朝が担っているのは「単なる流通機関」ではなく「産地を育てる」仕事であり、農協は花産業に欠かせない存在なのだと感じました。
▶︎ 農協とは、生産者と共に、より良い花を作り続けることに伴走する存在
コラムに出てきた花材、ハナイチでも購入できます 🌼







FARMER'S PROFILE

JA丸朝(ジェーエーまるあさ/丸朝園芸農業協同組合)
所在地:千葉県山武郡芝山町
主な栽培品目:サンダーソニア、カラー、マム、トルコキキョウほか
🔗 公式サイト
https://www.ja-maruasa.jp/
🔗 Instagram
@ja.maruasa_flower
WRITER'S PROFILE

フローリスト:MIU
新卒で入社した大手IT企業から花屋へ転身。フローリストとして修行を経て、現在は株式会社Domuzにて花の卸サイト「ハナイチ」の商品企画や仕入れに携わる。好きな花はクレマチス『水面の妖精』。
