「使う人の声を聞いてつくる」お客様の言葉から生まれる花づくり 金井園芸 / 千葉県南房総市
千葉県南房総市にて、ダリア・ひまわり・スカビオサなど多彩な品目を手がける金井園芸の金井隆さん。金井さんが一貫して大切にしているのが、「使う人の声を聞く」という花作りのスタンスです。
▶︎ 南房総市石堂にある金井園芸の圃場。多彩な品目が育つ
「使う人の声を聞く」
金井さんのものづくりのモットーは、販売店や最終的に届けるお客様が喜ぶかどうか。多くの花々を生産する中でも「1本で見たときにどうか」を常に考え、よりよい魅せ方ができないかを大切にしながら、創意工夫を重ねてきました。
たとえばスカビオサは、下から太い脇枝がついた長尺で充実感のある形で出荷しています。品種や規格を決めるときに「フローリストが使いやすいかどうか」を基準にしているのが、金井園芸の出発点になっています。

▶︎ 普段はなかなか見かけない、蕾や咲きかけのスカビオサもとってもキュート
お客様の声から生まれた、新しい花のかたち
また、品種選定の基本もお客様からの声の影響が大きいとのことです。「大きいダリアだけではなく、アレンジに使いやすい小さめのものを目指して作ってきた」という金井さんの言葉の通り、こうした姿勢は品種の発想にも表れています。
ラメをコーティングした「キラキラレース」もその例です。クリスマスの時期に街がキラキラしているのを見て、「花もキラキラしていたら喜ばれるのでは」と試みたものですが、当初は業界からの反応が芳しくありませんでした。
その後、あるお花屋さんが試しに仕入れて販売してみたところヒットし、今も販売が続いています。「お客さんが喜ぶものを花にできないか」という発想が、時間をかけて市場に受け入れられていった例のひとつです。
今では定番になりつつある、染めにも早い段階でトライしてきました。ホワイトレースを染めた「染めホワイトレース」も金井園芸を代表する商品になりました。
▶︎ ホワイトレースにラメをコーティングしたり、染めたり。挑戦的な商品を作り続けている
「肥料を与えすぎない」ことが、茎の強さにつながる
金井さんの栽培が目指す状態は、硬くしっかりした茎と、鮮やかな葉色です。葉の色が濃すぎると花持ちが落ちる。ちょうどいい状態に育て上げることが、金井さんの品質へのこだわりです。
そのために欠かせないのが、肥料の管理です。「窒素分が多すぎると、茎や綿毛の周りが腐りやすくなる」と金井さんは言います。肥料を与えすぎると組織が柔らかくなりすぎて傷みやすくなる。だからこそ肥料を意識的に控え、独自の堆肥で土づくりをしながら、茎が硬くなり葉色が適度に鮮やかな色味になるまで丁寧に育て上げています。
そうして花持ちが良く、フローリストにとって扱いやすい花に仕上げていくことが、金井さんの栽培のこだわりです。
▶︎ 硬くしっかりした茎と鮮やかな葉色が、夏の空の下に美しく輝いている
「農家の花だけで花束が作れる」多品種への挑戦
金井園芸では、年間を通じて途切れなく花を出荷できるよう、品目ごとのスケジュールを細かく組んでいます。例えば、9月にひまわりを掘り上げた後はブプレリュームを入れる予定とのことです。
さらに毎年、同じものではなく、気候の変化や市場のニーズに合わせて新しい品種にもチャレンジし続けています。ダリア・ひまわり・スカビオサといった主力品目に加え、ホワイトレース・ミント・ブプレリュームなどの品目も幅広く育てているのが金井園芸の特徴です。「金井園芸の花だけで花束がひとつ完結する」そんなミックス出荷を目指しています。
▶︎ 多品種を通年スケジュールで育てることで、農場単体でのミックス出荷を実現
フローリストへ:ひまわりを長持ちさせるコツ
金井さんからひまわりの扱いについていくつかポイントを教えてもらいました。
葉は全部取らず2〜3枚残すこと。葉を全部取ってしまうと切り口だけで呼吸することになり、老廃物の排出が集中して花持ちが落ちます。葉を残すことで蒸散が抑制され、葉自体が吸い上げのポンプ役になるため、水揚げが安定します。
水は夏場を中心に少なめ(浅水)にするのが有効です。切り花は茎から窒素分などの老廃物を水中に排出して水を汚すため、水を少なくすることで汚れを抑え、綿毛部分の雑菌繁殖も防げます。
▶︎ 葉を2〜3枚残すことが長持ちのポイント。水量は夏場は少なめに
最後に:花き産業の課題には一人ではなく地域で立ち向かう
「自分一人で何か言っていても、現状は何も変わらない。」と、金井さんがおっしゃっていたこの言葉が、印象に残っています。
花づくりは農地があってこそ成り立ちます。しかし南房総でも耕作放棄地は増えており、管理されない農地は害虫の発生源になったり、水田が荒れることで周辺の環境にも影響を及ぼします。
一軒の農家がどれだけ頑張っても、地域全体の農地を守るには限界がある。だからこそ近隣の農家たちと協力し合いながら、この地域の花産業を守っていきたいと、金井さんは話していました。
取材の中で、金井さんは私たちの話にも丁寧に耳を傾けてくださいました。お客様の声を聞き、花屋の使いやすさを考え、仲間と地域を守るために動く。その誠実さが、金井さんの花づくりの根幹にあるのだと感じました。
使う人の声を聞き続けてきたからこそ、お客様が本当に欲しいと思える商品として育ち続けているのだと思います。

▶︎ 取材の中で、私たちの話にも耳を傾けてくださった、お花にも人にも誠実な金井さんの姿が印象的でした
コラムに出てきた花材、ハナイチでも購入できます 🌼








FARMER'S PROFILE

金井園芸(かないえんげい)
所在地:千葉県南房総市
主な栽培品目:ダリア・ひまわり・スカビオサ・テマリソウ・ホワイトレース・ミント他
🔗 公式サイト
https://kanaiengei.com/
WRITER'S PROFILE

フローリスト:MIU
新卒で入社した大手IT企業から花屋へ転身。フローリストとして修行を経て、現在は株式会社Domuzにて花の卸サイト「ハナイチ」の商品企画や仕入れに携わる。好きな花はクレマチス『水面の妖精』。
