「すべての花を、マムで作る」生産者自らが需要を作る、マム農園 ジャパンフラワードリーム / 愛知県田原市
愛知県田原市、渥美半島でマムを生産する有限会社ジャパンフラワードリーム(以下、JFD)。代表取締役の藤目健太さんに、生産だけでなく、消費者に直接届く仕組みづくりや、需要そのものを生み出す取り組みについて伺ってきました。タイトルの「すべての花を、マムで作る」は、花屋が使いたい咲き方や色を、マムで実現していこうという考え方を指しています。その具体的な取り組みについても、お話を聞きました。
▶︎ 渥美半島・田原市でマムを生産するジャパンフラワードリーム
家業のマムづくりへ
藤目さんは長男として生まれ、家業の事務や経営を担う人がいなかったことをきっかけに、お父様が立ち上げたマム農家の会社を継ぎました。
JFDのルーツは、1989年に赤羽根町農協(現JA愛知みなみ)で結成された、マムの生産者グループ「フラワードリーム部会」にさかのぼります。2004年に有限会社ジャパンフラワードリームとして法人化し、2006年には部会を離れて独立した出荷を始めました。
現在、生産は弟さんが担当し、藤目さんは経営に専念するという役割分担で農園を運営しています。花を育てる技術と、それを事業として成り立たせる経営、それぞれの立場から農園を支えているのがJFDの体制です。
▶︎ハウス内には形や色とりどりのマムが並ぶ
夏でも需要を作る。冷房を使ったマム生産
JFDのハウスの一角には、冷房設備を備えた特別なハウスがあります。マムは暑い環境だと花の形や色が思い通りにならないことがあり、夏場はうまく咲かせるのが難しい花です。ここでは冷房でハウス内の温度を下げることで、夏でも開花させています。ただし、その分電気代などのコストはかさみます。
きっかけは、重陽の節句(9月9日)のプロモーションでした。節句の提案をしたところ、花屋から「そもそも花がないじゃないか」と言われたことから、「それならエアコンをつけて作ればいい」という発想に至ったといいます。コストをかけて花を作る以上、それを売る場も同時に考える。藤目さんは、生産とマーケティングを切り離さずに考えているといいます。
藤目さんによると、10年ほど前まで、重陽の節句にマムを求める花屋はほとんどなかったそうです。プロモーションを始めて約10年、今では9月上旬に向けた出荷のほとんどが注文で埋まるようになりました。
▶︎ ハウスの一角に備えられた冷房設備。夏でも咲かせられるようにしている
生産者自身が需要をつくる。ECサイトと定期便
JFDでは、消費者に直接花を届けるECサイトを運営しています。同じ生産者という立場だからこそ、周りの生産者に協力を仰ぎ、花を集めることができるのが強みです。
消費者と直接繋がる販売の場を持つことも大切にしているといいます。何が売れるかの情報を、直接お客さんからいただく機会となっています。
さらに、ファン向けの定期便のような仕組みにも力を入れています。ファンになってもらった方には展示会や収穫体験に招待する機会も用意し、花を届けるだけでなく、産地そのものを知ってもらう機会をつくっています。
▶︎ 出荷を待つマム。丁寧に管理され、消費者のもとへ届けられる
花屋に必要とされている花を、マムで実現する
JFDのマムは、幅広い色を揃えたミックスでの出荷が基本です。特定の色や品種だけに絞るのではなく、注文の傾向を見ながら色の配分を調整し、計画的に生産しています。これは、花屋がその場で必要な分だけを組み合わせて仕入れられるようにという考え方から来ています。
マムは日持ちがよく、輸送や取り扱いにも強い花です。その強さがあるからこそ、「すべての花をマムで作る」という目標に現実味が出てくるのだと藤目さんは話します。ダリアやバラのような咲き方をマムでも実現できれば、ダリアやバラの単価が高い時期や手に入りにくい時期でも、同じような使い方ができる。
そうした選択肢を増やしていくことが、花屋の負担を減らすことにつながると考えているそうです。
▶︎ ふんわりと重なる花びらが美しい、白いマムの品種
「いいマムの日」:消費者に届くまでの導線作り
JFDが力を入れている取り組みのひとつに、11月6日の「いいマムの日」があります。11月6日に近い11月3日の文化の日が「日本の文化」を象徴する日であること、菊もまた古くから日本を代表する花として親しまれてきたことから、この日が選ばれました。
記念日は、ただ制定しただけでは広がっていきません。藤目さんが大切にしているのは「買える場所にお客様をつなぐ」ことです。
全国の花屋にポスターを配布し、参加する店舗をマップに登録することで、テレビなどで「いいマムの日」を知った消費者が、実際に近くの花屋で花を買えるようにする。
記念日を作ることと、購入までの導線を作る施策をセットで進めています。
▶︎ マムの生産に加え、記念日の作成、購入までの導線までもを作る
最後に:生産者が、生産者のためにできること
夏に咲かせるための冷房設備、消費者と直接つながるECサイト、ミックスで届ける出荷、そして「いいマムの日」という記念日づくり。藤目さんが手がけてきたのは、どれも生産者自身が需要をつくり、花を届ける仕組みそのものをつくろうとする取り組みでした。
良いものをつくっているだけでは売れない。「売れる花は、最終的にお客さんが欲しい花。それだけなんです」と藤目さんは言います。花を育てるだけでなく、お客さんが何を求めているかを知り、それをどう届け、どう知ってもらうか。インタビューの中で藤目さんは、生産者が経営やマーケティングの視点を持つことの大切さを繰り返し話していました。
その姿勢は、自分の農園だけにとどまりません。全国花き若手経営者の会の一員として、需要づくりの取り組みやノウハウを他の生産者とも共有し、業界全体で花の需要を底上げしていくことにも力を注いでいます。
生産者自身が、生産者のためにできることがある。藤目さんの取り組みは、そのひとつの形を示しているように思います。
▶︎ ジャパンフラワードリームの取り組みは、生産者自身が需要を作るという道を示している

FARMER'S PROFILE

ジャパンフラワードリーム(有限会社ジャパンフラワードリーム)
所在地:愛知県田原市
主な生産品目:スプレーマムをはじめとした菊類
🔗 公式サイト
🔗 インスタグラム
https://www.instagram.com/fujimekenta/
WRITER'S PROFILE

フローリスト:MIU
新卒で入社した大手IT企業から花屋へ転身。フローリストとして修行を経て、現在は株式会社Domuzにて花の卸サイト「ハナイチ」の商品企画や仕入れに携わる。好きな花はクレマチス『水面の妖精』。